富士通からベイカレント、そして起業へ。CareerChain代表が作り上げる"個人が主役"の時代
2026.07.29

本記事のサマリ

富士通でシステム開発の上流工程を経験した後、ベイカレント・コンサルティングでマネージャーに昇格。その後LASINVAへ移り、2025年に株式会社CareerChainを創業した坂上さん。現在は経営者でありながら、自身もフリーランスとして複数のプロジェクトに参画し、WorkXのコンサルタントとともに、AIを活用したコールセンター高度化プロジェクトに携わっています。数々のプロジェクト経験を通し、「頑張った人が正しく報われる仕組みをつくりたい」という思いが生まれCareerChain起業に至った背景や、コンサルタントやエンジニアのこれからの姿について伺いました。

インタビュイープロフィール

  • 氏名:株式会社CareerChain代表 坂上 裕樹(さかうえ ゆうき)さん
  • 略歴:慶應義塾大学理工学部→ 富士通株式会社→ 株式会社ベイカレント・コンサルティング→株式会社LASINVA→ 株式会社CareerChain
  • 専門領域:保険業界を中心としたPM/PMO・DX推進・CX戦略・人材育成など
  • 現在の働き方:株式会社CareerChainを設立し、フリーランスコンサルタントとしても活動中
  • 株式会社CareerChain会社HPhttps://www.career-chain.com/
  • 「CareerChain」サービスHPhttps://www.career-chain.jp/careerchain


富士通からベイカレントへ。「35歳までにパートナーへ昇格する」という目標



Q. まずはファーストキャリアからお伺いさせてください。新卒で富士通を選ばれた理由や、実際に入社してみてからのお話を教えてください

私の世代は、自分が何をやりたいかというよりも、「どのJTC(日本の伝統的な大企業)に入るか」ということが、キャリアにおける一つの成功パターンとされる世代でした。その中で、まずは大企業を中心に就職活動を行い、ご縁があって富士通に入社しました。

入社後は早いうちから力をつけて成長していきたいという気持ちを持ちながら仕事に取り組んでいました。大きな会社にはよくあることですが、新卒社員はまずはじめに2年間の研修期間があり、そこで基礎をしっかりと身につけていきます。

当時の業務としては、SE(システムエンジニア)としてクライアントとエンジニアをつなぐ橋渡し役や、プロジェクトマネジメントが中心だったため、プログラムをしっかり書くようなポジションではありませんでした。

Q. その中で転職を意識するようになったきっかけは何ですか?

3年目になり研修期間が終わり周りを見ると、40代・50代くらいのベテラン社員と自分が同じような仕事をしているのに、給料は倍近く違うということに気づきました。そうした状況を目の当たりにする中で、より実力が正当に評価される環境に身を置きたいという想いが芽生えてきました。より実力主義の色が強い業界に出ようと考え、コンサルティング業界も視野に入れるようになりました。

当時は、IT分野での実務経験があれば第二新卒枠でも採用されやすい時期でした。コンサル業界の中でも、ベイカレント・コンサルティングはちょうど上場して間もない時期で、まだ世間からの評価が定まり切っていない面もありましたが、「成果に応じて報酬が上がる実力主義な社風」という印象があったため、入社を決めました。

Q. ベイカレント入社後は、どのようなキャリアを思い描いていましたか?

採用面接の段階から「35歳までにパートナーへ昇格する」という目標を自ら掲げており、面接官の方にも話していました。入社後も周囲の話を聞くうちに、努力次第で1年ごとに次のタイトルへ上がっていけるという手ごたえを感じ、できるだけ早くパートナーに昇格することを目指すようになりました。

当時思い描いていたのは、「30歳までにマネージャー」「32〜33歳でシニアマネージャー」「35歳でパートナー」というキャリアでした。

キャリアはほとんど思い描いていた通りに進み、当初の想定より1年ほど早いペースでの昇格で、29歳でマネージャーに昇格することができました。

組織の急拡大と、パートナーへの道のりで感じた限界



Q. マネージャーに昇格後、どのような変化を感じるようになりましたか?

マネージャーに昇格してから1年ほど経った頃、ベイカレント自体が組織として急速に拡大していきました。入社当時は1,000人規模だった会社が、気づけば3,000人、さらに5,000人に迫る勢いで成長していったのです。

大手企業にはよくある現象だと思いますが、この先のキャリアの展開がある程度見えてしまう感覚がありました。パートナーやシニアマネージャーという役職には、本来"再現性"のある実力が求められるはずですが、1年でその役職に上がれるかどうかは、努力の有無にかかわらずさほど変わらないのではないか、と感じるようになったのです。

Q. そこから、ベイカレントを離れる決断に至った経緯を教えてください

先の展開が見えてしまう感覚を抱く中で、それならば思い切ってスタートアップのような環境に身を置いた方が、自分のキャリアにとってより良いのではないかと思うようになり、ベイカレントを離れる決断をしました。

もともと、お金を稼ぎたいという気持ちが人一倍強く、その最短距離として、会社員という枠組みの中でいかに速くパートナーや役員になるかということを考えていました。

ただ、それだけが全てではないと思うようになり、完全に独立するほどのリスクは負えないものの、社員数が数十人規模のスタートアップ企業に入り、経営に近い立場で会社を大きくしていく中で、自分自身のスキルも磨かれるのではないかと考えるようになりました。そうした想いから、思い切って環境を変える決断をしました。

スタートアップファームへ転職。経営に近い立場の経験から起業に至るまで

Q. 数あるスタートアップ企業の中でLASINVAを選んだ理由と、そこでの役割を教えてください

他にもオファーをいただいていた会社はあったのですが、すでにある程度成長しており、上層部のポジションが埋まりつつある状態でした。それならば、まだ立ち上げ期にある組織で挑戦したいと考え、LASINVAを選びました。

参画後は、経営に近い立場でコンサル支援や事業企画支援を行っていました。

Q. 事業を考え始めるきっかけになった出来事はありましたか?

あるWeb3関連企業の事業企画支援を担当する機会がありました。その会社は、独自の技術基盤を持ちながらもマネタイズ方法やビジネスモデルに対して大きな課題を抱えていました。

当初は技術起点の議論が中心でしたが、このプロジェクトの経験が、フリーランス人材マッチングプラットフォーム「CareerChain」の事業に踏み切るきっかけとなりました。

Q. そこから起業に至った経緯を教えてください

半分は、偶然の巡り合わせによるものだったと思っています。

もともとは自分で会社を立ち上げるというよりも、LASINVAのコアメンバーとして、会社のIPOまで携わることを目標に入社していたため、起業そのものはあまり考えていませんでした。

しかし、以前から、努力をしている人が正当に評価されにくいという構造に課題を感じていました。

コンサルティングサービスや、フリーランスをはじめとする外部人材を組み合わせたコンサルティングワークの領域には、実態が伴わないまま自身の実力を過大に発信してしまう人が一定数存在します。そうした状況が続くことで、本来評価されるべき人材が正しく評価されにくくなってしまう。こうした課題感に、NFTという技術的な解決策を結びつけたのが「キャリアプラットフォーム」の構想であり、これを元に「CareerChain」を起業しました。

フリーランス理解のため、自身もフリーランスとしてプロジェクト参画

Q. 経営者でありながら、ご自身もフリーランスとして働かれているのはなぜですか?

自分自身にはフリーランスの経験がなかったからこそ、フリーランスの方々が実際に感じているニーズや悩みを肌で理解しなければ、本当に価値があるサービスは作れないだろうと考えました。そのため、自分自身も当事者としてプロダクトづくりに向き合いたいという想いから、今も引き続きフリーランスとして稼働しています。

今後も経営のみに専念するのではなく、現場に近い立場であり続けたいと思っています。

Q. 現在はどのようなプロジェクトに参画されていますか?

現在は、フリーランスとして、WorkXのコンサルタントの方々と共に、AIを活用したコールセンター高度化プロジェクトに参画しています。

個人的には、フリーランスとして単独でプロジェクトに入る場合とあまり大きな違いを感じていません。求められる水準が多少上がるくらいで、仕事への向き合い方そのものは変わらないからです。エンドクライアントとの距離は近くなりますが、自分にとっての本当の意味でのクライアントは、あくまでWorkXさんだと捉えています。

そのため、WorkXさんがクライアント企業からどう見られるかを意識しながら、自分がどのような役割を果たせるかをひたすら考え、それを実行していくというスタンスで動いています。

キャリアプラットフォーム「CareerChain」の構想

Q. CareerChainが目指す事業構想について教えてください

私が取り組んでいる事業構想は、「キャリアプラットフォームをつくる」ことになり、大きく3つに分けられます。

1つ目は、先ほどお話しした人材マッチングです。NFTや相互評価の仕組みを活用し、信頼性の高い情報をもとに、ビジネスマッチングの質や効率性を測っていくものです。

2つ目は、人材の価値を上げていく育成事業です。AI時代において「コンサル不要論」のような話も出てきている中で、コンサルタントとして活躍し続けるためには、自身の価値をどう高めていくかを支援する育成パッケージが必要だと考えています。実績を可視化するだけでは、本人が本来目指したいキャリアとの間にスキルのギャップが生まれ、新たな挑戦につながりにくくなってしまうためです。

3つ目は、キャリアデザインです。こちらはまだ構想段階にとどまっているのですが、キャリアとは、仕事だけでなくプライベートも含めたライフイベント全体も見据えながら築いていくものだと思っています。過去や現在の実績のみでなく、その人の未来までを見据え、ワンストップで支援できるような仕組みをつくっていきたいと考えています。

Q. どのような方に利用してほしいと考えていますか?

コンサルタントとエンジニアです。

まずはビジネスマッチング市場としてボリュームの大きい層の方々を中心に利用していただきたいと考えています。

これからのコンサルタント・エンジニア像

Q. AI時代において、コンサルタントとエンジニアの役割はどのように変化していくと考えていますか?

コンサルタントとエンジニアの境目は、今後徐々にだんだんなくなっていくのではないかと思っています。

これまでは、コンサルタントが上流、エンジニアが下流という役割分担がありましたが、今後はエンジニアがより上流側に寄っていくと思います。コンサルタントの担う範囲そのものはそこまで大きく変わらず、リーダー層とメンバー層という「深さ」の違いは出てきますが、「幅」の話は変わってこないと考えています。

一方でエンジニアは、コードを書くだけの仕事はAIに代替されやすくなっていくので、横にスライドしていく形で、今後はコンサルティング的なスキルセットが必要になってくると思います。いわゆるFDE(Forward Deployed Engineer)やRDE(Reinvention Deployed Engineer)といった動き方も主流になってくるのではと考えています。

Q. これからのエンジニアに求められる力は何だと考えますか?

単にコードを書くエンジニアではなく、きちんと設計ができ、仕組みを理解して判断ができるエンジニアが今後求められていくと思います。

AIは一見すごく頭が良いのですが、その分膨大な量の情報を処理するので、その中から適切な情報を引き出し、取捨選択できるかどうかが、コンサルタントとしてもエンジニアとしても、より求められてくる能力だと考えています。

Q. コンサルタント側にはどのような変化が求められますか?

コンサルタントも、調査や分析といった領域はAIに食われていく部分が結構あると思っています。そこから逃げずに、世の中の動きを正しく把握し、自分の価値がどこにあるのかを考える必要があります。これはエンジニアと同じ話です。事業会社と違ってコンサルタントは「人が商品」なので、結局その人が価値を出せないと意味がありません。世の中に求められている価値を正しく理解することが必要だと思います。

「CareerChain」が目指す未来像

Q. サービスは今後どのように進化させていきたいですか?

要素をどのように掛け合わせるかが、他のサービスと差別化させるためのポイントだと思っています。その中で現在はスキルや実績の可視化を軸にしていますが、今後はそこにクライアントからの評価などの要素を加えることで、次のマッチングに活かせるようなデータを蓄積できるプラットフォームにしていきたいと考えています。

Q. クライアント担当者との相性などもマッチングに関係してきそうですが、その点で考えられていることはありますか?

人と人との相性もマッチングに関係してくると思います。ただ、それを正確に人に紐づけてデータ化するのは、正直難しい領域だとも感じています。

クライアントといっても企業単位、個人単位で状況は異なりますし、役職や環境、出世意欲の有無まで見えてくるとよりマッチング精度は高くなるはずです。実際にそういったデータが取得できるかどうかは別として、フリーランスの方とクライアント同士、相互評価でフィードバックしてもらうことでそれぞれの志向が見えてくると思うので、まずはデータを蓄積しながら育てていきたいです。

また、単価や働き方の希望にとどまらず、その人がどのような仕事のスタイルを好むのか、どのようなクライアントと相性が良いのかといった、より深いインサイトまで見えるようにしていきたいと考えています。実力があることと、実際にやる気を持って取り組めるかどうかは、また別の問題です。だからこそ、スキルだけでなく、本人の志向性や仕事への向き合い方まで含めて丁寧に見極め、マッチングの精度を高めていくことが、これからのCareerChainにとって重要なテーマだと考えています。

Q. コンサルタントとエンジニア、両方の領域を扱っていく上で、どのような体制を描いていますか?

CareerChainとしては、コンサルタントとエンジニアの双方の領域に事業として関わっていきますが、自分一人ですべてを深く担うのではなく、それぞれの領域に強みを持つ人材を迎え入れながら、AI時代に合った形で仕組み化していきたいと考えています。すべてを自分で抱え込むのではなく、経営者としての役割を見極めながら、必要な部分は信頼できる人に任せていく。そうしたバランスの取れた体制づくりを、今後のCareerChainの成長の軸にしていきたいと思っています。

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