当たり前のことを、普通以上に。凡事徹底で掴んだ、AI時代におけるフリーランスコンサルタントの生存戦略
2026.10.19

本記事のサマリ

野村総合研究所(以下、NRI)でメインフレーム案件からキャリアを始め、約7年にわたってアプリケーションエンジニアからプリセールスエンジニアまで幅広い役割を経験した藤原さん。2019年にフリーコンサルタントとして独立しました。新しい技術が次々と登場する中で、一つの領域の仕事が減っていくという危機感と向き合い続けてきた藤原さんが、それでも生き残ってこられた理由は、技術力だけではありませんでした。NRI時代に培った基礎を土台に、当たり前のことを当たり前以上にやり抜くという姿勢を独立後も貫いてきたリアルな軌跡を伺いました。

インタビュイープロフィール

  • 氏名:藤原誠さん
  • 略歴:県立広島大学 → 電気通信大学大学院情報システム研究科修士 → 野村総合研究所 →フリーランスコンサルタントとして独立(株式会社Wisteriaを設立)
  • 専門領域:クラウドアーキテクチャ設計・構築、データ基盤設計・構築、データ分析/機械学習PoC、プロジェクトマネジメント
  • 現在の働き方:株式会社Wisteria 代表取締役。フリーコンサルタントとして、ProConnectのデータ基盤構築やクラウド設計を中心としたプロジェクトに従事 ※2026年10月現在
  • 株式会社Wisteria会社HP:https://wisteria-inc.co.jp/


新卒でNRIに入社。"当たり前"を徹底する姿勢の原点

Q. まず、新卒でNRIに入社されたきっかけを教えてください

もともと情報系の大学院に通っていたので、IT関連の仕事に就こうと考えていました。就職活動をする中で複数企業の選考を受けましたが、最終的に決め手になったのは、「コンサルタントを3年ほど経験することで、どこでも通用するスキルが身につきそうだ」と感じたことです。また、面接でお会いした社員の方の印象も大きいです。エネルギッシュで優秀な方が多く、そうした方々と一緒に働くことで自分自身も刺激を受け、成長できると感じたため入社を決めました。

Q. 入社後の印象はいかがでしたか?

正直「想像以上に厳しい」というのが第一印象でした。特に1年目のメンターの方が非常に厳しく、あらゆるタスクにおいて目的やゴール設定、アプローチ設計、成果の評価方法など、コンサルタントとしての考え方を徹底的に教え込まれました。親睦会や歓迎会の幹事としての立ち回りについてもフィードバックがあったくらいです。技術力や専門性よりも、仕事を進めるうえで当たり前のことを当たり前以上にやり抜く姿勢を、ここで叩き込まれたのだと思います。

メインフレーム案件からの出発と、独立という選択肢の芽生え

Q. 最初の配属はどのような案件だったのでしょうか?

最初の配属はメインフレーム、COBOLを使う案件でした。レガシーなシステムであったため、同僚の間では人気のない部署だったのですが、実際には難易度の高い大規模案件で、顧客との均衡も難しい現場でした。結果的にその経験が自分自身の成長につながり、今振り返ると非常に良い経験ができたと感じています。

新卒での採用はアプリケーションエンジニアでしたが、実際に自分の手でコードを書いたのは最初の1年だけで、その後はSEやサブシステムのリーダー、PMと、徐々に上流の役割を担うようになりました。

Q. その中で、独立を意識するようになったきっかけはありましたか?

様々な案件を経験する中で、自分の興味や専門性に近い案件を、できるだけ自分の意思で選びたいという思いが徐々に強くなっていきました。

会社員である以上、配属は会社の事業環境や人員配置に合わせて決まっていきます。自分の専門性にあった領域で手応えがあっても会社の都合で次の案件へ移ることもありますし、反対に専門性とは異なる領域の案件でクライアントから評価していただき継続となることもあります。組織としての判断は理解できるものの、会社に所属している以上、この案件のアサインに関する課題は解決できないと思うようになりました。

また同期のスピード昇格などを目にする中で、社内の物差しだけでなく、市場からの評価という軸でキャリアを考えるようになったのもこの頃です。外の市場で評価された方が、自分としては納得感があるという考え方が芽生えていきました。

フリーランスコンサルタントとして独立。自分の意思で選べる働き方を掴むまで



Q. 独立を決意された経緯を教えてください

NRIに在籍していた当時、社内で立ち上がり始めていた機械学習の部署への異動を打診されました。せっかくの機会だったので、まずはプリセールスとして携わることにしました。

機械学習のPoCに携わる中で、自分がやりたい方向性がよりはっきりと見えてきました。金融・保険業界の案件が多く、業界的に使える技術に一定の制約がある中で、もっと幅広い技術に触れながら専門性を伸ばしていきたいという気持ちが強くなり、自分の意思で仕事を選べる働き方として独立を決めました。

退職の2ヶ月前からはProConnectなど複数のフリーランス向けエージェントに経歴書を送り案件の状況を確認していました。実際に自分でも受けられる案件がありそうだという手応えを得られたので、そこから退職を決断しました。会社員としてではなく、自分の意思で仕事を選んでいける働き方を実現したいという想いが、独立を後押ししてくれました。

Q. 当時、独立することに対する不安はありましたか?

会社員時代は、様々なプロジェクトを経験してきましたが、独立してからはより自分の専門性や目指す方向性に合わせて案件を選べるようになりました。案件が途切れる不安よりも、自分の意思でキャリアを築いていけることにとても魅力を感じています。

Q. 独立後最初のプロジェクトに入ってみて、NRI時代の経験をどのように感じましたか?

独立後最初の案件は、アパレル企業のデータ活用に関するPoCでした。

実際にプロジェクトを進める中で改めて実感したのは、NRI時代に培ったコンサルタントとしての基本動作が大きな強みになっているということです。ヒアリングして課題を分解し整理する、論点を分けて設計する、スコープやスケジュールを可視化して管理する、第三者が読んでも理解できる資料を作るなどといった、当たり前にやっていることが実は当たり前ではないのだと、独立後最初の案件で実感しました。そこで技術力や専門性よりもコンサルタントとしての基本動作が独立後の信頼獲得につながっていると気づいた瞬間でした。

AIに代替されないのは、現場の暗黙知を拾い上げる仕事


Q. 今後、AIに代替されにくい領域はどこにあると考えていますか?

お客様のドメインに入り込んでいける人が、今後重要だと思います。ドキュメントやデータになっていない暗黙知、ベテランが経験に則って下している判断ロジックや判断根拠となるパラメーターを明らかにして、機械学習モデルやワークフローに置き換えていく仕事は代替されにくいと感じています。

Q. 具体的にはどのような取り組みなのでしょうか?

以前、エンジニアが税理士事務所に1~2ヶ月ほど常駐し、AIを活用して業務改善を行った事例をお聞きしました。その事例では、実際にエンジニアが税理士の方と現場で一緒に仕事をしながら、日々の業務を観察し、ひとつひとつ課題を明らかにしていったそうです。例えば、手書きの帳簿を会計ソフトに取り込む作業や、領収書と仕訳データを照合する作業などを対象とし、顧問先や担当者に依存する独自のルールを明らかにし、ワークフローで自動化していきました。特徴的なのは依頼されたシステムを開発するのではなく、現場の担当者自身も気づいていない課題を見つけ、その場で改善策を実装する点です。

日本での事例はまだ少ないですが、今後こうした形でお客様の業務に深く入り込み、課題の発見からソリューションの実装まで一貫して担うコンサルタントやエンジニアの価値はますます高まっていくと考えています。

Q. そうした仕事で大切にされていることがあれば教えてください

お客様の現場に深く入り込み、実際の業務を観察しながら、担当者へのヒアリングを通じて課題や判断プロセスを丁寧に紐解いていくことです。

現場には、担当者の経験や勘に基づく判断など、まだ言語化・データ化されていない情報が数多くあります。こうした情報を引き出し、AIで活用できる形に整理するには、現場の方々との対話や地道な業務理解が欠かせません。AIが進化するほど、こうした現場に根ざした課題発見力や業務理解力が、コンサルタントの重要な価値になっていくと考えています。

今後目指していきたいキャリア

Q. 今後のキャリアについて、どのように考えていますか?

これから挑戦していきたいのは、特定業務のドメインに深く入り込んで、暗黙知による意思決定をワークフローなどで自動化していく仕事です。まだ日本では事例が少ないですが、今後データやロジックが存在するものはAIに置き換わることを踏まえると経験しておいた方が良いと思っていますし、市場動向やお客様のニーズを捉えながら、そうした方向性の案件に携わっていきたいと考えています。

独立を検討しているコンサルタントへ



Q. 最後に、独立を検討しているコンサルタントへメッセージをお願いします

単純に、独立してみてダメだったら会社員に戻ればいいと思います。まずは飛び込んでみることをお勧めします。

フリーコンサルとして活動する以上、営業活動も仕事の一部だと考えています。経歴書を最新の状態に保つ、エージェントへの自分の強みや価値を伝える、案件終了前に早めに相談するなど、まずは仕事の機会を増やすような営業活動を毎回当たり前に継続することが大事だと思っています。

それに加えて、業務遂行能力とは別に、挨拶や時間厳守、対面での打ち合わせ、懇親会への参加といった基本的なビジネスマナーは、フリーランスだからこそ大切にした方がいいと思っています。この辺りを当たり前のこととして大事にしていくことが、独立後も長く必要とされ続けることにつながっていると感じています。

あとがき

株式会社野村総合研究所(NRI)でメインフレーム案件からキャリアをスタートし、機械学習のPoCを経て独立された藤原さん。「自分の意思で仕事を選べる働き方をしたい」という思いから、フリーコンサルとしての道を歩み始めました。

お話の中で一貫していたのは、「当たり前のことを当たり前以上にやり抜く」姿勢です。課題の整理や論点の分解、期限の管理、第三者が読んでも伝わる資料づくり。NRIで叩き込まれたこうした基礎が、独立後の信頼につながっているといいます。営業活動や挨拶、時間厳守といった基本的なビジネスマナーも、毎回当たり前に続けているそうです。

近年、技術の領域では自動化が進んでいます。そうした中で藤原さんが注目しているのは、お客様の現場に入り込み、暗黙知を丁寧に聞き出してワークフローに落とし込んでいく仕事です。データに落ちていないものを拾いに行く部分には、人にしかできないものがあると語ります。藤原さんは今後、特定業務のドメインに深く入り込む案件に挑戦していきたいと考えています。

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