連載では、今は人気がないが今後需要が伸びると想定される領域をテーマにしてお話ししていきます。
フリーコンサルタントの方には、世の中の需要(ニーズ)を把握し、自身の市場価値を上げていく取り組みを行うことが必要だと考えています。今回の連載を通して、今後需要が伸びる領域を把握し、フリーコンサルタントの方の今後のマーケット予測のお役に立てればと思います。
第3回目は「WEB3.0」です。
Q:「WEB3.0」とは?
A:
「WEB3.0」とは2018年頃に提唱された次世代のWEBの総称とされています。
「WEB3.0」を詳しく見る前に、まずWEBの歴史をみていくと、「Web1.0」は、1990年代半ばから2000年代半ばにかけて普及してきたインターネットやWebの総称と言われています。Web1.0 の時代では情報の送り手・受け手が決まっていることを前提とした一方通行の情報発信しかできませんでした。
次に2000年代後半頃から普及した現在利用しているインターネットのことを、「Web2.0」といい、双方向の情報発信可能となりました。このWEB2.0の時代に、「中央集権型」のインターネット体制が確立されました。「中央集権型」のインターネットとは、例えば私たちが何か情報を調べたり発信したりする際には、GoogleやInstagramと言ったプラットフォームを使用しますよね。このようなプラットフォームには管理者が存在し、管理者によるルールに沿って利用する必要があります。そのため、ユーザーは管理者によって、アカウント凍結等の利用制限を受ける場合もあります。このように管理者が存在しているインターネット体制のことを「中央集権型」と言います。
そして、今回のテーマである「WEB3.0」は「非中央集権型(分散型)」のインターネットという意味で「ブロックチェーン」と「メタバース」の2つの概念が混在して語られることが一般的です。
「非中央集権型」のインターネットとは、管理者が存在しなくても、ユーザー同士でデータの管理を行うことや、個人間でのコンテンツの提供等が可能になります。そして、この「非中央集権型」サービスの代表的なものに「ブロックチェーン」が挙げられます。
「ブロックチェーン」とは、「取引の履歴を暗号技術を用いて鎖のようにつなげ、データを管理するという技術」のことで、ブロックチェーンを採用することで、データの改ざんが困難な分散管理型のシステムの構築が可能となります。
この「ブロックチェーン」技術を利用しているのが「仮想通貨」ですね。そもそもブロックチェーンはビットコインいわゆる仮想通貨(暗号資産)の開発の過程でうまれました。他にも、例えば、ブロックチェーン技術を用いたIBM Blockchain World Wireでは、国際送金の際にブロックチェーンを使うことで今まで複数の銀行を経由するため「数日」かかっていた決済処理を「数秒」にまで短縮することができる仕組みを実現しています。
このように「WEB3.0」は「ブロックチェーン」技術を基盤とした「非中央集権型(分散型)」のインターネットという考え方で普及してきていましたが、最近では新たな概念として「メタバース」も加わるようになりました。
「メタバース」は、分散型のインターネット環境においてやり取りされる様々なデータや情報の受け皿となり得るプラットフォームであると考えられており、メタバース上でも、仮想通貨を用いて現実世界と同じように様々な商品やサービスの取引を行えるほか、アバターによるコミュニケーションを通じて多種多様なデータや情報のやり取りができるので、あたかも現実世界であるかのような体験ができるようになる技術です。メタバースの技術を用いた「バーチャルオフィス(仮想オフィス)」のサービスもでてきていますよね。
Q:「ブロックチェーン」と「メタバース」の今についてもう少し詳しく教えて下さい。
A:
「ブロックチェーン」ですが、今は第4世代にきていると考えています。
1世代目は先に述べた「ビットコイン」です。今ではビットコインだけでなく、ブロックチェーンは多くの暗号資産(仮想通貨)の基盤となっています。
2世代目は仮想通貨だけでなくイーサリアムというプラットフォームが誕生したことです。イーサリアムは仮想通貨イーサ(ETH)が使用できることに加え、「スマートコントラクト」機能を備えた分散型アプリケーションプラットフォームとなっています。
「スマートコントラクト」とは、ブロックチェーン上のプログラムのことで、ある契約・取引について「特定の条件が満たされた場合に、決められた処理が自動的に実行される」といった、契約履行管理の自動化を指します。
実用例としては、フランスの保険・金融グループであるAXAは、 スマートコントラクト技術を使用したフライト遅延保険商品「Fizzy」です。まず、搭乗予定者がフライト遅延保険を購入すると、ブロックチェーン上に購入履歴が記録されます。この時点で、購入した事実と保険の内容は改ざんできなくなります。そして、このスマートコントラクトは、グローバルな航空交通データベースに接続されているため、2時間以上のフライト遅延発生が確認されると、自動的に保険の支払いが行われます。
第3世代では、「NFT」や「DeFi」に代表されるイーサリアム上のアプリケーションの発達が挙げられます。
「NFT(Non-Fungible Token)」とは、代替不可能なトークン、唯一無二の「一点物」の価値を生み出せるトークンとして、デジタルデータに唯一性を与えることができるようになります。例えば、ブロックチェーン技術をベースに開発したゲーム内のアイテムやキャラクターにNFTが活用されることで、ゲーム内で取得したアイテム等が資産となるのです。
「DeFi(Decentralized Finance)」とは、主にイーサリアムを中心としたブロックチェーン上の金融サービスの総称です。 DeFiを使用することで、銀行がサポートしている大半のこと、 利息の獲得、借入、貸付、保険の購入、資産の取引などを行うことができます。
そして第4世代は、イーサリアム以外の「ポルカドット」といったプラットフォームの出現です。「ポルカドット」では、例えばビットコインとイーサリアムのように、これまで互換性がなかったネットワーク間の価値やデータの送信を可能にしています。
このように、ブロックチェーン上のアプリケーションや新たなプラットフォームの発展により、ブロックチェーン上の参加者の取引の高速化やシステムの安全性が向上されることから、様々な業界からビジネスへ今後利用されていくことが期待されています。将来、社会インフラで活用できるようになれば、より一般的なもの、なくてはならないものの一つとして普及していくかと思います。
次に「メタバース」についてですが、「メタバース」の普及には、「VR」と「AR」が欠かせません。
「VR(Virtual Reality)」とは、「仮想現実」という意味です。VRは仮想の世界を現実世界から完全に遮断するため、ユーザーはVR機器を着用することが一般的です。VR機器では「Meta Quest」が有名ですね。
「AR(Augmented Reality)」は「拡張現実」という意味の言葉です。現実世界を主体に、新たな画像やテキストの情報を加えて世界を「拡張」します。ARではスマートフォンといったデバイスを利用し、例えば、カメラで写している画像にCGの映像を重ねて表示すれば、そのCGが実在しているように見えるといった技術です。数年前にヒットした「ポケモンGO」の技術がまさにそれですね。
このようにARやVRについてはゲーム業界での活用があり、少し身近な存在となってきたかと思います。
VR機器は今や数十種類発売されていますし、大手企業だけでなく、TikTok運営バイトダンス傘下のPico、フランスのLynxなどのスタートアップもVR市場への参入し、VR市場は今後も拡大していくと考えられます。
「メタバース」はVRやAR技術の発展により普及が進むと考えられ、ディープラーニングにより音声認識や画像認識の精度が飛躍的に向上したことで、よりバーチャルとリアルを融合することが可能となりました。
Q:「WEB3.0」の今後は?
A:
このように「WEB3.0」の概念は明確には定義されておらず、説明が難しいところですが、「WEB3.0」を上述の「ブロックチェーン」や「メタバース」といったキーワードで捉えると、ビジネスでももちろん「WEB3.0」の技術は活用されてきてはいるものの、現状一番「WEB3.0」を活用しているといえるのはゲーム業界ではないでしょうか。
2000年代頃のWebそのものがプラットフォームとなって諸々の機能やサービスを提供する「Web 2.0」が広まりだした頃も、同じように、いわゆるオタクがまず飛びつき、そこから普及していったと考えています。今では、WEB2.0を牽引してきGAFAM(Google、Amazon、Facebook、Apple、Microsoft)に代表される会社のサービスは、社会インフラとまで言えるほどになってきています。
今はまだ「WEB3.0」はイノベーター理論でいう「アーリーアダプター」、つまり「商品やサービスを初期段階で購入する人」の段階と言えますが、今後は「WEB2.0」と同様にビジネスへの展開が広く進んでいき一般的に普及していくと考えられます。
また、日本では「骨太方針2022」において成長戦略の柱の1つとして「WEB3.0」が位置づけられており、企業としても「WEB3.0」を利用したビジネス戦略を検討していく流れになってくると考えられます。その際に、「WEB3.0」の知見や技術がある人材への需要が高まると予想しています。
次回予告「GX」
次回はGXについて解説します。ぜひ楽しみにお待ちください!