フリーコンサルタント マーケット予測〈連載最終回〉 ~ 需要が急騰する領域はココだ! ~ “iPaaS”
2023.01.31

本記事のサマリ

今後フリーランスの需要が伸びると想定する領域をテーマとしており、第5回目は「iPaaS」です。コラム内では、iPaaSを理解する上で押さえておくべき、「API」「SaaS」「RPA」といったキーワードに触れ、iPaaSの動向について解説しています。

今回のテーマは「iPaaS」です。

Q:iPaaSとは?

A:

iPaaSとはIntegration Platform as a Serviceの略称で、クラウドまたはオンサイトのアプリケーションのあらゆる組み合わせをつなぐプラットフォームのことを言います。これら統合されたアプリケーションは互いにデータの連携や、統合されたフローとして実行することが可能となります。

例えば「Zapier(ザピアー)」というiPaaS製品では、5,000以上のWEBアプリケーションやクラウドサービス、SNSなどを連携することができ、業務に合わせた自動化ワークフローを作成することができます。Zapierを使うとGoogleフォームにお問い合わせがあった際に、Gmailからお客様に受け付けた旨のメールを自動送信、問い合わせ内容をGoogleスプレッドシートやNotionのデータベースに格納、担当者には問い合わせがあった旨をSlackで通知する、といった一連のワークフローをすべて自動化することが可能となります。


Q:iPaaSについてもう少し詳しく教えて下さい。

A:

iPaaSについての理解を深めるためには「API」「SaaS」「RPA」のキーワードについてお話したいと思います。

まずは、「API」についてです。

iPaaS とは、クラウドアプリケーションをつなぐプラットフォームですが、このアプリケーション同士の接続はAPIによって行われています。APIとは複数のソフトウエアを結びつけるハブのことであり、最近では「APIエコノミー」という言葉が出てきているように、APIを使えば、インターネットを介して様々な事業者が提供するアプリケーションの機能をつなぎ合わせ、サービスを構築することが可能です。例えば、Uberというタクシー配車アプリがありますが、Uberで配車依頼を行うことは、APIを介してGoogle Mapsを使います。一方、Google Mapsアプリにて、経路選択で「配車」を選ぶと、Uberアプリを介さずにタクシーを呼ぶことも可能です。このように、APIを介して他の事業者のサービスと連携することで、リッチなシステムを作れるのがAPIエコノミーの利点です。

次に「SaaS」についてです。

iPaaSの最大のメリットは、複数のSaaSに分散したバラバラなシステムを統合することです。SaaSとは、クラウドサーバーにあるソフトウェアを、インターネット経由してユーザーが利用できるサービスのことです。多くのSaaSサービスは外部のプログラムと連携するAPIを提供していますが、このAPIを用いて一から統合のためのプログラムを開発することは大きな負担となります。この負担を減らすことがiPaaSの特長です。様々な領域のSaaSが次々と出てきており、iPaaSは今後もますますビジネスのソリューションを支えるツールとなっていくと考えられています。

3つめは「RPA」です。

人の作業を自動化すると言えばRPAを思い浮かべる人が多いと思います。RPAはアプリケーションの操作画面を自動的に操作するロボットを活用して、人が行っていた作業を自動化します。例えば「システムAからシステムBへデータを転記する」といった処理です。このRPAの仕組みは、iPaaSと同様に複数の情報システムのデータの統合、プロセスの統合のために使われる場合もあります。RPAとiPaaSはデータの統合、プロセスの統合など、多くの目的が共通していますが、大きな違いは、一般的にRPAはパソコン画面操作を機械で行う機能がメインである一方、iPaaSはAPIを使ってシステムに直接アクセスをする点が異なります。このため、RPAが処理の安定性に欠ける一方、iPaaSはAPIが提供されていないと自動化ができないため、やりたいことに合わせて使い分ける必要があります。

基本的には、複数のクラウドサービスを統合するなど、単純かつ大規模なシステム連携であればiPaaSの方が適している可能性が高く、便利ツールのように人の作業を自動化するのであればRPAが適していると言えます。


Q:なぜiPaaSの需要が高まるのか?

A:

近年、システムの開発・運用において「Microservice(マイクロサービス)」というアーキテクチャを採用する例が増えてきています。マイクロサービスアーキテクチャとは、サービスを構成する各要素を「マイクロサービス」と呼ばれる独立した小さなコンポーネントとして実装するという手法です。マイクロサービスはそれぞれのサービスごとに独立して開発・実装を行えるため、全体像の把握が容易でかつ、サービスの開発・改修を、従来よりも素早く行えるようになります。そしてこの各マイクロサービス同士は「API」によって連携されます。例えば、LINEは、トークをはじめとして、電話、ショップ、公式アカウントといった多数のサービスで構成されています。これらのサービスは単一のシステムとして開発されているわけではなく、それぞれ独立したシステムとして開発・運用され、お互いにAPIを介している、いわゆるマイクロサービスと呼ばれるアーキテクチャとなっています。このように企業がマイクロサービスアーキテクチャを採用する事例は増えてきており、今後企業は複数のマイクロサービスを有することが増えてくるでしょう。


このように企業が複数のアプリケーション、SaaSシステム、マイクロサービスを有することで、企業は各アプリケーションにまたがるデータ連携、全体業務フローの効率化、業務の自動化等の課題が生まれていきます。これらの課題には、単純な手作業の業務フローを自動化するならRPA、マイクロサービス化されたシステムの連携を行うにはAPI設計、SaaSシステムの連携にはiPaaSの導入といった様々なサービスや仕組みを組み合わせた対応策が考えられます。いかにクイックでリーンな対応を行えるかが重要となってきており、ここにニーズが高まってくると考えています。

そのためには今回のテーマである「iPaaS」を知ることだけでなく、iPaaSをとりまくキーワードとして上記で述べた「API」「SaaS」「RPA」に対する導入・設計スキル、運用設計スキル等を身に着けることが必要かと思います。また、iPaaS製品については現時点では大半が海外製ですが、日本のソリューションや法的観点で適しているのは日本製となるため、日本製のiPaaS製品の知見を増やすことが良いでしょう。